タンザニア眼科医療支援活動2018 Part1

【報告者】浅見 哲

アフリカのタンザニア連合共和国で2018年5月26日~6月3日に眼科医療支援活動を行いました。今回より数回にわたりその活動について報告させていただきたいと思います。

今回、同行させていただいた医療支援活動は、愛知県春日井市山﨑眼科院長の山﨑俊先生が行ってこられたタンザニア眼科医療支援活動です。まず初めにこの支援活動について紹介させていただきます。
この「タンザニア眼科支援チーム」は、2009年に発足された「日本眼科国際医療協力会議(JICO)」(http://www.jico-jp.org/)の9つある眼科団体のうちの1つです。2007年よりタンザニア連合共和国の主要都市Dar Es Salaam(ダルエスサラーム)にあるMuhimbili(ムヒンビリ)大学病院で白内障手術の支援を行っています。活動開始の契機は、徳島市藤田眼科院長の藤田善史先生を中心として行われていた「ミャンマー眼科支援活動」(ミャンマーの眼科医への超音波白内障手術の普及という目的を達したため、2014年の活動をもって終了)に参加していた山﨑俊先生が、2006年に当時の駐日タンザニア大使であるムタンゴ氏と面会した際、「同じような活動がタンザニアでもできないか?」と相談を受けたことです。
これまでのチームのメンバーは、岐阜市岐阜ほりお眼科院長の堀尾直市先生、金沢医科大学教授の佐々木洋先生、広島県広島市レチナクリニック横山眼科院長の横山光伸先生、愛知県東海市の知多小嶋記念病院副院長の小嶋義久先生方を中心とした日本人眼科医と眼科医療関係者で構成されています。小嶋義久先生は、2012年から参加されており、今年も一緒に活動に参加されました。

タンザニアは、アフリカ東部、赤道の南に位置し、面積は約95万㎢(日本の約2.5倍)、人口は約4500万人(日本の約35%)で、アフリカ最高峰のキリマンジャロ山とその麓で栽培されるコーヒーや、ライオン、象、シマウマ、キリンなどの野生動物が有名です。
タンザニア国民の宗教は、イスラム教が35%、キリスト教が30%、伝統的宗教が35%です。

タンザニア国内の眼科医数はわずか40人ほどであり、日本の眼科医数が13,840人(平成19年度)と比較しても、眼科医が異常なほど少ないことが分かります。眼科医療は資金不足などから大学病院でも十分な治療が行えない状況です。そのため眼科医療が行きわたらず、手術で治癒しうる疾患である白内障で非常に多くの方が失明しています。国民皆保険制度のある日本では考えられないことです。
2015年時点での、全世界の視覚障害者は約2億5,260万人で、そのうち3,600万人が失明状態で、約2億1,660万人が低視力の状態です(文献1)。低視力の最大の原因は、未矯正の屈折異常であり、全体の52%を占めています。そして、白内障の25%が続きます。未矯正の屈折異常とは何かと言いますと、先進国とは違い発展途上国では、眼鏡やコンタクトレンズなど、適切な視力矯正手段に誰でもが手が届くわけではなく、そのために視力が悪い状態のまま過ごしていることです。

渡航の準備は2018年1月から始まりました。日本では見られない熱帯特有の感染症があるため、予防接種を受ける必要がありました。狂犬病、腸チフス、4種混合(ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ)。特に狂犬病は発症すると100%の死亡率ということで必須です。これだけの予防接種を受けてもう大丈夫だと思っていたら、お隣のコンゴ共和国ではちょうど出発の頃にエボラ出血熱が発生していたため不安な中での出発となりました。実際には、コンゴ共和国の中でも西にある都市であり、タンザニアの中でも東海岸にあるダルエスサラームからは遠く離れていたため杞憂でしたが。
また、タンザニアではハマダラカが媒介するマラリア熱も流行しており、各種虫よけスプレーなどを購入しました。

2018年5月26日 眼科手術に必要な大量の機材、医薬品を携え、羽田空港から飛び立ちました。カタールのドーハまで12時間、ドーハからタンザニアのダルエスサラームまで6時間のフライトでした。


ダルエスサラームの空港にて
大量の医療関連機材を入れた段ボール箱を携えて

(次回に続きます)

(文献1.)Bourne RRA, Flaxman SR, Braithwaite T, Cincinelli MV, Das A, Jonas JB, et al: Vision Loss Expert Group: Magnitude, temporal trends, and projections of the global prevalence of blindness and distance and near vision impairment: a systematic review and meta-analysis. Lancet Glob Health 5: e888-e897, 2017